沖縄の求人・就職情報をいち早く!! 沖縄を代表する日刊紙【琉球新報】が発信する、沖縄県内・県外就職・求人情報ニュースサイト「ウイークリー1(Weekly 1)」

このエントリーをはてなブックマークに追加

<変革 沖縄経済―コロナ禍の挑戦>好況に急ブレーキ

 新型コロナウイルスの深刻な打撃が、好調だった沖縄経済を一転させた1年だった。観光需要と雇用環境の好転による旺盛な消費意欲を背景に急成長を続けてきた沖縄経済だが、2020年は新型コロナという災厄に見舞われ、急激に失速した。感染の拡大防止と経済回復の両立という難題に苦しむ沖縄経済だが、21年の復活、飛躍を期す企業の積極的な挑戦から、新しいビジネスチャンスも生まれている。

――――――――――――――――――――――――

【深刻な現況】観光客65%減に転落

 日本銀行那覇支店の四半期ごとの企業短期経済観測調査(短観)では、企業の景況感を表すDIが19年12月調査まで31四半期(7年9カ月)連続でプラスを記録していたが、20年3月調査でマイナスに転落した。新型コロナの緊急事態宣言の影響が出た6月調査では、1974年5月の調査開始以来最低となるマイナス35まで悪化した。

 人の移動が感染拡大の大きなリスクとなり、基幹産業の観光は需要が「蒸発」した。20年1月から10月末までの入域観光客数は302万9300人で、前年同時期に比べ64・8%減と大幅に減少した。特に19年に過去最高の293万人を記録した外国人観光客は、沖縄を発着する海外航空路線が3月24日以降全便運休していることから、9割以上減の25万6900人と激減している。

 観光客向けの食材生産や飲食店、ホテルのリネンなど関連産業が多い観光業が打撃を受けたことで、経済全体に深刻なダメージが生じている。行動が制限されたことから県民の消費も縮小した。県は新型コロナウイルスによる経済損失を、6482億1300万円と推計している。

 企業の業績悪化は雇用にも影を落としている。景気の拡大を受けた企業の人手不足感を背景に、19年の県内完全失業率は2・7%と3%を下回り、全国平均の2・4%に迫っていた。しかし、コロナ禍で採用減や雇用調整が増え、10月の完全失業率は3・8%に上昇している。

 世界ではワクチンの投与が始まっているが、収束時期は依然として見通せていない。窮状を脱して再び成長を取り戻せるか。21年は沖縄経済にとって真価の問われる1年となる。

――――――――――――――――――――――――

【苦境に立つ中小零細企業】廃業・解散 最多ペース

 地域経済を支えてきた中小零細企業が、新型コロナウイルスによる景気悪化で苦境に立たされている。

 東京商工リサーチ沖縄支店の調べでは1~10月末の県内企業の休廃業・解散件数は累計で361件となり、過去最多だった2018年の年間375件を上回るペースで推移している。新型コロナウイルスの収束が見通せない不透明さや、後継者不在などの厳しい環境から、ビジネスの継続を諦める事業者が増加しているとみられる。仕入れや納入などの取引先への連鎖や、雇用への悪影響が懸念される。

 清算する時に負債が残る「倒産」とは違い、「廃業」や「解散」は資産を残して事業を終えることを指す。企業の資金繰り破綻を回避することに重きを置いた行政や金融機関の支援により、コロナ禍でも倒産は抑制されている。東京商工リサーチ沖縄支店によると、1月から11月までの県内倒産件数は33件と過去最少のペースだ。

 倒産が少ない一方で、休廃業や解散が増加している。背景について、同支店の友利政人支店長は「借金して事業を続けるくらいなら、周囲に迷惑を掛けない内に畳もうという経営者心理が働いている」と指摘する。

 経営を継ぐ後継者の不在という課題を抱えている企業も多く、体力を消耗して粘るよりも早めに区切りを付ける経営者は増加すると見込まれる。友利支店長は「倒産や廃業は景気の動きに遅れて現れる遅行指標だ。現在の景気の悪さが影響し、21年はさらに増加するだろう」と見通した。

――――――――――――――――――――――――

<識者に聞いた>

獺口浩一氏/終息後見据え戦略を

 新型コロナウイルスの影響で拡大し続けていた沖縄経済に急ブレーキがかかった。想定外の出来事で、特殊要因ではあるが、景気変動や外的要因による経済の落ち込みはこれまでもあった。こうした事態に対して、企業においては内部留保など自由度の高い資金をどの程度蓄えていたのか、資金の調達先を多様に持ち合わせていたのかなど、備えの部分で大きな分かれ道となるような1年だった。

 感染症の長期化で規模の小さい企業ほど厳しい状況に陥っている。当初、積極的な融資をした金融機関も今後、企業ごとの経営事情を見極める可能性がある。雇用の面でも目に見える形で完全失業率が悪化し、有効求人倍率も低下した。倒産件数は持ちこたえているように見えるが、データ上に出てこない零細事業者の廃業も多い。

 沖縄経済には感染症拡大前から課題があった。産業の自給率が低く移輸入超過の構造になっていた。観光業も自給率の低い「移輸入型の観光業」になっていた。例えば、コロナ前からホテルは増加し、雇用や消費、税収の拡大につながっていたが、運営事業者は県外や国外の企業が多数を占めている。使う食材等も、その多くを県内から調達しているわけではなく、自給率の低さが目立っていた。

 コロナ前の観光業の拡大は、言い過ぎかもしれないが、従来からの沖縄の課題を抱えたままの「見せかけの拡大」とも言える。逆に地場産業が押されて、体力を落としている部分も見える。地元ホテルが廃業したり、資本が変わったりしており、現在の観光業の在り方は沖縄に元々あった資源を生かす形ではなかった。

 地域経済を拡大し、体力をつけるためには、どの産業も自給率の向上が引き続き課題となる。沖縄の中で付加価値を創造しつつ、国内外に積極的に販路を拡大し、商品・サービスを発信することが求められる。観光業はもちろん、沖縄の重要な産業の一つだが、観光に目が向き過ぎているのではないか。ものづくりを担う県内企業が沖縄の外にもっと目をやるべきだ。

 沖縄経済は感染症終息後を見据えた戦略を立てる必要がある。時期は見定めにくいが、市場のグローバル化や人口減少に伴う国内需要の頭打ち感など、基本的な市場環境の変化は変わらない。感染症が一段落した後、県内企業が積極的に県外、国外に出て行って、多様なビジネスパートナーと協力関係を結び、大きく飛躍することを期待したい。

 (琉球大学国際地域創造学部教授、財政学)

………………………………………………………………

上地哲氏/金融機関の対応重要

 新型コロナウイルスの感染拡大で、経営困難に直面する県内中小企業や小規模事業者が急増している。経営相談窓口の県よろず支援拠点への年間相談件数は初めて1万件を超える勢いで推移している。そのうちコロナ関連の相談は4千件を超える見込みだ。2014年から勤務しているが、予想もしなかった状況に立たされている。

 相談者のほとんどはコロナの影響で売り上げが下がり、どうしていいか分からない小規模事業者たちだ。地域のスーパー経営者をはじめ、飲食や宿泊、卸小売りなど、ほぼ全ての業種からの相談があった。急増する相談に応じるため、相談員を3人増の25人体制に強化した。さらに、コロナ感染防止対策の一環で、対面相談をウェブ対応(オンラインや電話)に切り替え、遠くにいる人も相談しやすいように工夫した。

 20年2月から開始した緊急制度融資などの据え置き期間が21年2月にも終了するが、市場や売り上げの回復に見通しがつかない。沖縄振興開発金融公庫と県信用保証協会への聞き取り調査によると、県内では約2万数千社がコロナ関連融資を受けており、返済原資が確保できない中小企業の資金繰りがさらに悪化する。

 今後、金融機関がどう対応するかが非常に重要になってくる。返済できない事業者たちに対し、雇用を守る上でも行政の支援も必要だ。(県よろず支援拠点チーフコーディネーター)

2021/01/01 琉球新報新年号 5ページ 3204文字

※本ウェブサイト内に掲載の記事の無断転用は一切禁じます。全ての著作権は琉球新報社または情報提供者にあります。

自分にしかできない仕事が、きっとここにある!

沖縄の求人・就職情報を随時更新中!!今までのスキルが活かせる仕事がしたい。

もっと自分にあった環境で働きたい。そんな願いに応えます!

求人・就職に関する各種セミナー 無料講習会情報