ホテル・観光 戻らぬ人手/待遇二極化、県内資本は劣勢
ホテルを中心に、観光産業で人手不足が深刻化している。7月の国内からの入域観光客数は、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の9割以上に回復するなど、ウィズコロナの認識が広まり、沖縄観光は盛り上がりを見せている。一方でコロナ禍での先の見えない不安から観光業界を離れた人も多く、人手の確保がこれまで以上に大きな課題となっている。
7月に糸満市にオープンした「琉球ホテル&リゾート名城ビーチ」では、開業前に2~3年をかけて新卒や現地採用、グループ会社からの採用を含め計500人を確保した。今年4月から全社員を対象に月2万円のホテル手当を新設。大卒の初任給も20万円を超えるなど、社員の賃金を上げる取り組みを行っている。
生活と仕事を両立してほしい思いから、社員用の保育園と140室の寮を糸満市内に設立した。保育園は午後8時半まで対応、土日も開園する。週末や夜遅くの勤務もある社員の負担を減らす仕組みを確立した。
佐藤健人総支配人は「観光立県の沖縄では、観光産業で働く人の給料が一番良くなる必要がある。安心して働ける環境の維持に努めたい」と話した。
利益率との葛藤
那覇市内のシティホテルやビジネスホテルからは「コロナ前と同じ条件では人が集まらない」と苦悩の声が挙がる。
那覇市辻のホテルサンスイナハの川中由仁総支配人は「以前は時給850円くらいで募集していたが、今は千円でも集まらない」と話す。
コロナ禍で多くのホテルの単価が下がった。今年2月にオープンした同ホテルも、当初想定の約3分の2の価格で販売している。利益率が下がるため、稼働率を上げようとすると清掃などの人手が足りない。かといって募集賃金を上げすぎると経営が維持できないというジレンマを抱える。
川中総支配人は「外国人の雇用が鍵だ」と話す。現在は同じ業務でも責任の範囲を変えるなど、能力に合わせて個別に賃金を設定している。「コロナも落ち着きこれからインバウンド(外国人旅行客)も戻り始めるだろう。その際の通訳業務を果たす役割としても外国人雇用は大切だ」と話した。
イメージアップ
沖縄労働局によると、宿泊業は昨年比で1・5倍ほどの求人が出ているという。しかし、ホテルの休業や、契約社員の契約が更新されなかった経緯などがあり、これまで働いてきた人がホテル業界を敬遠する風潮も見られるという。
県外企業は県内企業と比べ賃金が1~2割程度高い傾向にあり、人材の確保で県内資本のホテルが劣勢に立たされている側面がある。沖縄労働局の担当者は「待遇の二極化が顕著になっている」と懸念する。
沖縄労働局は業界のイメージアップのために、関係団体と協力して30分以内のミニ面接会も実施している。フルタイムでの募集をパートにするなど、働き方の多様性を高めるために求人条件の工夫もしている。
2022/09/11 琉球新報朝刊 11ページ 1170文字
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