生活保護最多3万8472人/「恥」と申請を我慢/背中押され利用 82歳女性/「人生、悪くないはずよ」
新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、県内の生活保護利用者が3万8472人と過去最多を更新する。利用に踏み切り、落ち着いた暮らしを取り戻した人がいる一方、「周りに知られたくない」「恥ずかしい」などの理由で申請を我慢し、苦しい生活を続ける人もいる。雇用環境が急激に悪化する中、最後のセーフティーネット(安全網)とされる生活保護の重要性は増すばかりだ。(1面に関連)
新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が出ていた昨年5月初旬、那覇市内でスナックを経営する女性(82)が声を振り絞った。「苦しい。どうすればいいか…」。市内の雑居ビル3階に入る「県生活と健康を守る会」の事務所。女性は窮状を切々と語った。
生活が暗転したきっかけは、法外な利息を要求するヤミ金融だった。20年ほど前、10万円を借りた。それがあれよあれよと、数百万円にまで膨らんだ。昨年は新型コロナが追い打ちを掛け、家賃の滞納も続いた。もう持たない。同会に相談すると、生活保護の利用を勧められた。
女性はためらった。「生活保護を受けるのは恥ずかしい」と思っていた。家族に知られるのも嫌だった。それでも相談員の照屋つぎ子さん(73)に「これだけいっぱい働いてきたのだから、無理しなくていいよ」と背中を押され、生活保護を申請した。
昨年9月、30年近く切り盛りしてきたスナックを廃業し、生活保護の利用が始まった。保護費は居住地や年齢、世帯人数によって違う。那覇市の場合、1人暮らしの75歳以上は、生活扶助と住宅扶助を合わせて9万7470円。この女性は年金分が差し引かれ、月に約6万8千円が支給されている。
エレベーターのないアパートの3階で、1人暮らしを続ける。家賃を払うと、1日に使えるお金は千円ほど。がんを患い、体重は10キロ近く減った。怖い思いも、つらい経験も重ねてきた。取材中、「もう聞かないで」と声を落とす場面もあったが「いま」を尋ねると、髪をかき上げて笑顔を見せた。
「人生で一番落ち着いているよ。楽しい。これでいいのかな、と思うくらい。生活保護を受けて良かった。人生、悪くないはずよ」
4畳半の居間。壁際には何枚もの写真が並ぶ。その中には、常連客に囲まれてほほえむ女性がいた。
2021/05/04 琉球新報朝刊 21ページ 938文字
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