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<社説>深刻化する雇用情勢/困窮者のニーズに応えよ

 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う時短営業などの影響で雇用情勢が深刻化している。行政機関には実効性のある対策が一層求められる。

 厚生労働省が発表した昨年の有効求人倍率は前年比0・42ポイント減の1・18倍で、1975年以来45年ぶりの大きな下落幅となった。県内でも前年比0・44ポイント減の0・90倍で、統計のある2006年以来、最大の下げ幅だった。非正規労働者を中心に解雇・雇い止めも全国で急増している。

 この厳しい雇用情勢は、地域の産業構造によって異なる。各地で生活者のニーズの把握を徹底すべきだ。政府や県、市町村は苦しむ人々の声や要望を募るべきである。その要望に沿った対応策を迅速に実施することこそが、実効性のある対策だ。

 政府はこれまで、雇用調整助成金、持続化給付金、定額融資などの助成金を延長・拡大してきた。倒産を食い止め、解雇もさせない名目だが、支援が追いつかない上に、十分な救済に至っていない。

 休業している事業主からは家賃や施設維持費など固定費の支援拡充を求める声が根強い。3度にわたる緊急事態宣言を受けて業績が悪化し、助成金や借り入れで経営をつないできた企業も多い。いわば綱渡り状態である。企業がこれでは労働者の雇用や給与が安定するはずがない。企業、労働者双方にきめ細かい支援が求められている。

 中でも沖縄は、観光や飲食のサービス業や中小・零細事業者の割合が高い産業構造のため、人の移動を止める自粛要請や時短営業が経営を直撃している。特に基幹産業である観光への影響は大きく、幅広い業種に波及している。コロナがなくても県民所得は全国一低く、子どもの貧困問題も深刻で経済的に脆弱(ぜいじゃく)だ。一人親世帯など生活弱者はすぐに窮地に追い込まれる。

 琉球新報などが昨年12月にネット上で実施したアンケートでは、手取り所得がコロナ前の半分以下に減った人は回答者の28・9%に上った。

 今、必要なもの(複数回答)を聞いたところ、「個人への給付金」が58・8%と最も高く、次いで「学費や公共料金の減免や猶予」が38・9%、「家賃や住宅ローンの猶予や補助」が28・3%と続いた。低収入のため家賃など固定費の支払いに苦しむ県民の姿が浮かぶ。

 不安定な雇用情勢や感染への懸念、先が見えない不安や危機感などが広がり、深刻な心理状態を示す人は半数に上った。助成金だけでなく精神的ケアへの支援も必要だ。自殺者も急増している。

 年度末は非正規労働者の契約更新が集中する時期でもあり、雇い止めの増加も懸念される。行政機関は先手先手で迅速な対策を講じるためにも、まずは実態把握に努めるべきだ。関係団体との意見交換だけでなく、行政に届きにくい生活困窮者の声を丁寧に拾う必要がある。

2021/02/11 琉球新報朝刊 8ページ 1134文字

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